武士道に学ぶ:組織への忠誠心

昨日の中小企業診断士の勉強会では大学の理系学部で非常勤講師をしている診断士仲間から、重要講義の模擬実施とブラッシュアップの意見交換が行われました。メーカーに品質保証に関するものでしたが、品質に疑いがある時に勇気をもって出荷停止や回収に踏み切ることの重要性を学生に伝える内容でした。しかし、実際の製造業の現場では、品質管理部門が出荷停止を主張しても営業・開発部門が反発したり、上層部が出荷を押し切ったりすることが起こり得ます。出荷停止をして、再検査の結果問題なかった場合に品質管理部門が後ろ指をさされるような組織であれば、職業倫理に忠実な判断=出荷停止を主張しにくくなるでしょう。これは組織文化の問題でもあるのです。

私の家族も企業勤務をしていますが、職業倫理に反するような会社命令がしばしば行われているようです。中間管理職に背景を問い合わせても「会社が決めたから、やるしかない」という無気力な回答しかこないそうです。「会社が決めたことは絶対」というのは一見、忠誠ある組織人に見えますが実はただの無気力・無関心社畜でしかありません。それはその個人の問題ではなく、そのような人を評価し、そのような文化の醸成を進めてきた経営者の責任です。

江戸時代の名著『葉隠』は近代には新渡戸稲造『武士道』や丸山眞男『忠誠と反逆』等に引用されてきました。まさに武士道のバイブルです。そのメインテーマは「忠節なくば逆意なし」です(学生時代の記憶では「忠誠心なくば逆意これなく候」でしたが、意味は同じですね)。逆意というと大げさですが、「諫める態度」を差します。現代の組織では上司に対し、意見(特に反対意見)をしっかりと伝え、組織をより良い方向に導こうとする態度です。中には面倒だなと感じる上司もいるかもしれませんが、建設的な反対意見の積み重ねが新たな発想を生み、組織をより強く成長させます。また品質問題・コンプライアンスに関しては重大なアクシデントを未然に防止することに直結します。経営者・管理職は反対意見を言ってくれる部下に対し、忠誠心ある行動と認め、賞賛する度量が求められます。その積み重ねが、心理的安全性を持つ組織文化を形成します。

「忠節なくば逆意なし」真に忠誠心ある組織人を生み育てる企業文化を作っていきましょう。

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